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2023/8/02

日々の食卓にちょっといい器|後藤奈々

おとなKomachi編集部


自分の毎日は、自分で豊かに。おとなの小さな贅沢。

食事は毎日のことだから、ちょっといい器で、いい時間に。いつもの料理も、スーパーのお惣菜だって、お気に入りの器に盛り付けるだけで、景色が変わるから不思議です。今回は、新潟市南区で作陶に励む「後藤奈々」さんの器をご紹介します。

モンブランをのせた5寸輪花皿(2,310円)は、料理を美しく見せるリムがありながら、その幅は控えめで場所を取らず扱いやすい。唇の形に沿って“かえし”が付いたツイスターマグ(2,970円)も口当たりがよく、飲み物を口に運びやすい。使いやすさと美しさを備えている。

 

優しい気持ちをもたらす 美しさと使いやすさ

淡く優しい乳白色になめらかな曲線。触れた質感もやわらかく、手作りならではの温かさを感じる。作り手の後藤奈々さんは新潟市南区出身、現在も地元で作品作りを行っている。

取材の際、工房には出荷を待つ器たちがずらりと。どれも優しい色合いとやわらかなフォルムだったのが印象的でした。

 

後藤さんの器をよく見ると、雪の結晶のような細やかで上品なきらめきが表面を覆っていることに気付く。チタンの粉を混ぜて作る「結晶釉」と呼ばれる釉薬を自身で調合し、使用しているからだそう。

写真では伝わりにくいのが何とも…ぜひ手にとって結晶釉のきらめきを見てほしいです。

 

同じ大きさ、同じ形であっても、光の加減や見る角度によって微妙に表情が異なる。手に取り、さまざまな角度から眺め、自分だけの“とっておき”を見つけたい…そんな気持ちにさせてくれる選ぶのも楽しい器だ。

このような花器も多く作っている後藤さん。テーブルにちょこんとあるだけで何だか幸せな気持ちをもたらしてくれる一輪挿し。

 

やわらかい線を描くような感覚でろくろを引いています。成形はろくろと手だけ、ヘラは使いません。植物や鉱物など、自然界にあるものを彷彿させるような、ナチュラルで美しいフォルムを作るよう意識しています」と後藤さん。

作品の雰囲気と見事にリンクする穏やかなお人柄の後藤さん。ろくろを引く作業を見せてくれました。

 

普段の料理をちょっと上品に見せてくれる輪花皿、両手で包むと手のひらにすっぽりと収まるカップ、どんな料理も盛り付けやすい適度な深さのある鉢。どの作品も美しくて使いやすい。そして、優しい風合いが日々のちょっとした時間に豊かな気持ちをもたらしてくれる。

後藤さんの作品では珍しい、濃いブルーの器。はっきりとした色合いなのに、ゆったりとした表情なのは、やはり後藤さんが作るフォルムならでは。笠間焼でよく使われるブルーの釉薬を使った作品。

 

個展が始まっています。

2023年8月2日(水)~27(日)、新潟市南区白根にある「art & coffee SHIRONE PRESSO」にて個展「Calmness」を開催しています。普段、工房などで販売を行っていない後藤さんの器を、実際に目で見て触れて購入もできる貴重な機会です。ぜひ足をお運びください。

個展のタイトル「Calmness」は「静かさ」「穏やかさ」といった意味を表す言葉。後藤さんと後藤さんの作品が織り成す、穏やかな時間と空間を楽しめるはずです。

Calmness
会場:art & coffee SHIRONE PRESSO
住所:新潟市南区白根2748-5
時間:開廊時間10時~17時(カフェは9時30分~16時30分LO)
定休日:月・火曜
電話番号:025-367-2023

 

後藤奈々さんの器の数々

※後藤さんの作品はすべて一点物であり、今回の個展ではお取り扱いのない作品もございます。予めご了承ください。

 

写真左上から時計回りに、輪花5寸平鉢(2,750円)、輪花7寸平鉢(4,400円)、輪花豆鉢(1,760円)。後藤さんの器は半磁器と呼ばれるものが中心。岐阜や益子から取り寄せた粘土を高温で焼き上げ、見た目や性質ともに陶器と磁器の両方の特性を併せ持った器に仕上げている。

 

写真奥の左が輪花5寸皿(2,310円)、右が輪花6寸皿(2,970円)。手前のふたつは輪花小皿(各2,090円)。5年ほど作っているという輪花皿は後藤さんを代表する作品のひとつ。グレーのようなアイボリーのような風合いも持つやわらかな乳白色と、シックなブラウン調の2色展開。

 

しのぎ輪花皿(豆皿 各1,540円、5寸皿 各2,640円)。「お花の形の器が作りたくて。この夏、同じデザインのコンポート皿も作りました。この作品で第3弾になります。フチ部分の青色を出すのが難しくて…これは2度焼いて、ようやく納得のいく青色が出せました」。

 

緑釉6寸鉢(3,300円)、緑釉7寸鉢(4,180円)。グリーンの釉薬を使ったシンプルな形状の鉢は、煮物を盛り付けても、パスタを盛り付けたりしても美しく映える。「光の加減で紫っぽく見えることもあるんですよ」。結晶釉の不思議な魅力は、実際に手にとって感じてほしい。

 

※こちらの記事は2021年に「新潟Komachi/新潟 器 歳時記」で取材した内容を再編集したものです。

撮影:中田洋介(中田写真事務所)


作家プロフィール/後藤奈々さん

新潟市南区出身。京都府にある陶芸の職業専門学校に通った後、茨城県にある笠間焼の窯元「桧佐陶工房」で経験を積み、2008年に地元南区で開窯。現在は個展やグループ展などを中心に各地で活動している。
Instagram:@nanagoto7

URL art & coffee SHIRONE PRESSO
http://shironepresso.net/