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2023/5/22

終活は気付いた時が始め時です

おとなKomachi編集部


終活カウンセラーに教わる終活 基本の「キ」

「終活」という言葉が生まれたのは2009年といわれています。週刊朝日の連載をきっかけに、2012年には日本流行語大賞も受賞。現在では広く認知される言葉、そして行動になりました。しかし、そもそも「終活」とは…? 何のため、誰のために…? 終活を行うことに対して、まだピンと来ていない方も多いかもしれません。そこで、終活カウンセラー協会の理事を務める井上智則さんに、終活の基本の「キ」を教えていただきました。

終活カウンセラー協会 理事

井上智則さん

新潟県新潟市にて介護施設「ケア・クリエイト・アソシエーション」8事業所と学習塾を経営。自らはケアマネージャーとして利用者、家族と関わるかたわら、認知症・介護制度の専門家として、全国の介護施設での研修、企業・団体での講演などを多数行っている。

そもそも終活とは…?

——終活と聞いてまず思い浮かぶのが、葬儀やお墓、相続、遺産、エンディングノートなどについて…いわゆる、人生の終焉なのですが。

井上さん:終活が人生の終焉について考えることに間違いはありません。ただ、人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動、と私たちは考えています。この終活を加速させた背景に、少子高齢化と核家族化は大きく関係しています。

 

——終活にもその2つが関係しているんですか。

井上さん:昔はいわゆる“サザエさん一家”で、2~3世代が一つ屋根の下で生活していたので、親子の生活ぶりがわかったんです。印鑑はココにある、友人は○○さんだ、とか。なので、遺品整理なども必要ありませんでした。しかし、核家族化が進み、親子の団らんが減ってしまったことによって、自分の考えや生活ぶりを家族に伝えることなく、亡くなってしまう方が増えた。結果、残された家族は、どこに何があるかわからないし、誰に連絡をしたらいいかもわからない、通帳は? そもそもどこの銀行に預金していた…?など、わからないことだらけで非常に困る状況に。

 

—–確かに、一緒に暮らしていなければ親の生活ぶりはわからないかもしれません。

井上さん:ですよね。核家族化が進み、子どもがいない世帯も増えたことで、自分の意志を残しておくための行動として終活が必要になり、これほど世の中に認知されるようになったんです。

 

幅広い世代から注目を集めるデジタル終活

——終活は残された家族が困らないためでもあるんですね。

井上さん:そうです。もちろんご自身の心の安定にもつながります。「万が一何かあっても終活しているから安心」と思えるようになりますし、過去・現在・未来を整理するので、自分を見つめ直す機会にもなります。終活は、不安を減らし、これから安心して楽しく生きていくためのもの、と考えてください。

 

——どのくらいの年代の方が本格的に始めているのでしょう?

井上さん:定年退職なさった世代や、70代以上の方が多いですが、人生いつ何が起こるかわかりません。若くして命を落としてしまう方もいますし、40代くらいで認知症になる方もいらっしゃいます。何歳から、ではなく、興味を持った時が始め時と思ってください。私たちは、妊婦さんに向けた終活セミナー(オンライン)なども開催していますが、毎回、多くの方が参加されますよ。子どもができ、親としての責任が生まれたタイミングで終活を始めようと、人生設計のひとつとして捉えてくださる方も今は多いです。

 

——おとなKomachiでも終活に対する意識調査をした際、20代の方からも反響がありました。

井上さん:そうだと思います。先行き不透明な世の中なので、将来のために備え、考える世代は幅広くなっていると思いますよ。目に見えないところにも大事なものがある時代になってしまった、というのも大きいのではないでしょうか。

 

——目に見えないところ…?

井上さん:デジタルの世界です。暗号通貨とか、スマホ決済とか。そういったデジタル終活は今、非常に注目を集めていますね。スマホに残された情報や、SNSのアカウント、サブスクサービスなどをデジタル遺品と呼ぶのですが、これらは目に見えないからこそ整理しておくことが大事なんです。「(故人様の)スマホのロック解除ができない」という相談も多く寄せられますが、8桁以上の暗証番号の解除はほぼ不可能といわれています。スマホの暗証番号やサブスクの情報などは、家族に伝えておくことをおすすめします。暗証番号を伝えるのはちょっと…という方は、せめてヒントだけでも残しておいたほうがいいと思います。

 

家族や周囲に伝えるまでが終活

——だんだんと終活の大切さがわかってきたような気がします。

井上さん:終活は必ずしも将来のためだけではないんです。過去・現在・未来を整理することで、今の自分を見つめ直すことができます。過去を思い出して懐かしみ、家族と話すことによって、自分の人生を振り返ることができます。こんな趣味持っていたな、あんな友達いたな、とか。過去を振り返ることは現在の把握にもつながります。現在を把握すれば、将来どうしたいか、が少しずつ見えてきます。

 

——現在や将来を整理するうえで、これはやっておいた方がいいという具体的な項目はありますか?

井上さん:現在であれば、銀行口座や財産、保険、宗派などの確認ですかね。整理していたら、預金が残っていた口座が見つかった、なんてこともありますので。未来については、やはり終末期医療についてでしょうか。いざという時、本人に決断する力はありません。また、介護が必要になった時、自分はどうしてほしいか、家族に伝えておくことも大事です。また、葬儀などの互助会に加入している場合は、それも伝えておきましょう。

 

——なるほど。未来のことは家族に意志を伝える、と。

井上さん:そうです。自分で満足するのではなく、伝えるまでが「終活」です。伝える手段を作り、自分と家族が将来困らないために、できることから始めてみてください。

 

終活カウンセラー協会 理事
井上智則さん

「先々の不安が解消できる知識を終活カウンセラーという仕事を通じて提供しています。終活についてお困りごとがあればお気軽にご相談ください。出張セミナーなども承っています」


取材協力 ケア・クリエイト・アソシエーション

住所 新潟市西区小針2-35-5 佐山第一ビルA号
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URL 終活カウンセラー協会
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