自分の毎日は、自分で豊かに。おとなの小さな贅沢。
食事は毎日のことだから、ちょっといい器で、いい時間に。いつもの料理も、スーパーのお惣菜だって、お気に入りの器に盛り付けるだけで、景色が変わるから不思議です。今回は、新潟市秋葉区で作陶を行う「もえぎ陶房」さんの器をご紹介します。
押味さん自身普段使いしているという雲のお皿。取材日はチキンと豆が入ったタイカレーを用意してくれました。丼料理にも使えるし、肉料理や煮物はもちろん、サラダやパンとも相性がいいサイズ感。
自由な風を吹かせて 新津焼の伝統を支える
新潟市秋葉区に江戸時代から伝わる「新津焼」。地元・秋葉山の土と石油を燃料とした焼き窯を用いて、徳利や植木鉢、すり鉢といった実用的な陶器が盛んに作られていた時代があった。その歴史と伝統を現代に復活させるため、160年余りの歴史を持つ「西潟製陶所」の6代目として、新津焼をたった一人で受け継ぐことを決意した押味くみこさん。
「工房に来た際には、いろいろな器を手に取り、質感を感じてください」(押味さん)。
叔父と一緒に始めた「もえぎ陶房」を2020年に建て直し、作品作りや日常使いの器作り、陶芸教室などを精力的に行っている。「使う人の想像力を大事にしたい」と語る押味さんが作る器には、決まった用途はない。くすっと笑みがこぼれるかわいい器から、きりっと渋めの器まで作風もさまざまで自由。釉薬も限定することなく、多彩にそろえている。
押味さんの想いが詰まった作品がずらりと並ぶギャラリー兼工房。こちらで陶芸教室も行っている。
「色のない人生はつまらないと思うから、釉薬は彩り豊かに」「手に取った人に幸せが訪れてほしいから、青い鳥をモチーフに」と、もえぎ陶房を作るすべての要素に理由があり、作品一つ一つに明確なメッセージが込められている。
シンプルだけど、どこかウィットで愛くるしい。いつもの食卓に優しい気持ちを添えてくれるもえぎ陶房の器。
「でも、私自身主婦でもあるので、使いやすさは大事にしています」。そう、一見、個性的な器も使ってみると、どんな料理もおいしそうに受け止めてくれて、自然と食卓になじむ。そして驚くほど手馴染みがいい。今日はどう使おう、明日は何を盛り付けよう…そんなワクワクをもたらしてくれるもえぎ陶房の器。不思議な魅力を持っている。
陶芸体験用に用意されている釉薬の数々。種類の多さに驚く。選ぶのも楽しく、仕上がりもまた待ち遠しい。
もえぎ陶房の器の数々
※価格は2021年取材時のものです。
青い鳥をきっかけに、色とりどりの鳥モチーフが加わっていったという虹色小鳥シリーズ。ちょこんとのった鳥が何とも愛らしい。贈り物としても喜ばれそうな箸置きは770円から。器としてはもちろん、アクセサリーを入れてもかわいい蓋物は2,750円から。
パンダのごろごろ感をイメージして作ったというパンダシリーズ。底に重心があり、ころころと転がる作りに。「日常にちょっとした楽しみがあるといいじゃないですか」と押味さん。使う度、ほほえましい気持ちになる。おちょこは1,650円、湯飲みは2,200円、片口は3,520円から。
型を押した後、手彫りを施した刻花(こっか)シリーズ。丁寧に掘られた花の柄が美しく、透明感のあるやわらかな風合いの釉薬も魅力的。大きなプレートは13,200円、小さな器は2,200円から。ため息がもれるほど繊細な手彫りは、ぜひ工房で直接目にしてほしい。
「混沌とした世の中でも、ひとつ情熱があれば、心はしっかりと戻ってこられる」といったテーマで作られた情熱シリーズ。そばちょことしてや、ちょっとした副菜を盛り付けてもいいフリーカップ(2,200円)のほかに、小物入れ(1,100円~)などもあり。
※こちらの記事は2021年に「新潟Komachi/新潟 器 歳時記」で取材した内容を再編集したものです。
撮影:中田洋介(中田写真事務所)
作家Profile/押味くみこさん
新潟市秋葉区生まれ。東北芸術工科大学・大学院で陶芸を学び、卒業後「西潟製陶所」の中に叔父とともに「もえぎ陶房」を設立。西潟製陶所の伝統を守りつつ、新たな風を取り入れながら新津焼の復興を支える。
新津焼 西潟本家 もえぎ陶房
住所:新潟市秋葉区滝谷本町2-5
営業時間:10時~18時 ※変更の場合あり、詳細はHP参照
電話番号:090-8252-1856
定休日:日~木曜
駐車場:4台
備考:陶芸教室や陶芸体験も開催。詳しくは直接問い合わせを。